今週のお題「マイベスト家電」
無名のデザイナーNUNOHENGEです。
[ミシン]
なんじゃ、たけのこか?
[へんげ]
え、何のこと?
[ミシン]
そのTシャツの模様のことじゃよ。
[へんげ]
ああ、これね。
[ミシン]
おまえさんが、よく着とったTシャツじゃのう。
[へんげ]
そうなんだよ。
あちこち色褪せてくたびれてきちゃって。
[ミシン]
所々、色がまだらになってきとるのう。
[へんげ]
だからいっその事、ビンテージ風にしようと思って。
リメイクしてみたんだ。
[ミシン]
この生地は、あれを作った時の残りじゃな。
[へんげ]
そうそう、これ。
リメイクは、生地同士の相性も大事なんだよ。
[ミシン]
色褪せたTシャツに、綺麗な生地をのせてもチグハグじゃ。
水玉の掠れ具合が合うのかのう。
[へんげ]
それに、この残布で服を作る程の用尺は残って無かったからね。
[ミシン]
でも、Tシャツのように伸縮性のある素材に、伸びないこの生地を縫い付けるのは結構難しいのう。
[へんげ]
その通り。
特に斜めの長い距離は、よれたりするから難しいよね。
[ミシン]
そこは、わしの腕の見せ所じゃ。
[へんげ]
流石、うちのベスト家電。
私達って、チームワーク抜群だね。
[ミシン]
コツがあるんじゃろ?
[へんげ]
平面ではなく、ボディに着せた状態で切り抜いたパーツをピンで留め付けるんだ。
予めパーツの周囲を巻きロックかけて、ほつれ止め始末しておくよ。
[ミシン]
カーブや重さで伸びた所は、その状態でピンを打つのじゃな。
[へんげ]
でも、やっちゃいけない事があるんだ。
下糸が無くなっているのに気付かずに、ピンを外しながらどんどん縫ってしまう事。
縫えていないのに、ピンが外れた状態になる。
もう一度ボディに着せて、ピンを打ち直さないといけない。
[ミシン]
さっき、おまえさんがやっていた事じゃな。
[へんげ]
あ、ばれてた?
[ミシン]
30㎝位、気付かずに縫ってたろう?
[ミシン]
だったら、教えてよお。ミシンさん。
[ミシン]
少し音が変わるから、おまえさんなら気付くんじゃろ。
「生地の声を聞け」じゃなかったのか?
[へんげ]
自分の服だから、気を抜いてた。
[ミシン]
竹は、イネ科の植物だって知ってるか。
[へんげ]
え、そうなの?
滅多に花が咲かない事は、知ってるよ。
[ミシン]
その花は、稲穂のような形をしているそうじゃ。
120年位の周期だと言われているのは、花はその位珍しいということらしい。
竹に関しては、解明されていない事も多いらしいんじゃ。
[へんげ]
神秘的だねえ。
私、なんとなく竹林って好きなんだ。
[ミシン]
竹はしっかり地面に根を張って、真っ直ぐ空に向かって成長している感じがするのう。
見習いたいものじゃ。
ん、わしは家電か?
【ぽんこつ山のへんげさん】
20代の頃の話。
職場の同僚達と、お互いを花に例えるなら何?なんて話をしていた。
明るいからヒマワリ?
華やかだから、バラ?
控えめだから、カスミ草?
で、へんげは?と私に話が及んだ時。
居合わせた男性社員が、「へんげは竹」と一言。
そこで、一同大笑い。
「あれ?なんで笑うの?どういう意味?」と私。
「竹を割ったような性格だからでしょ」と同僚達。
「そもそも、竹って花が咲くの?」
あの頃、竹の花の事は何も知らなかった。